中国拳法・武術 「八卦掌」の技・テクニックのコツ・ポイント 1

「中国拳法 「八卦掌」の技・テクニックのコツ・ポイント 1」のまとめです。

百練は一走にしかず、走を百練の祖となす、と言われる程に走圏は八卦掌の基礎です。(奥義です。)
巷に溢れる二十四式散手や六十四手等の数多ある散手は変化の結果に過ぎません。
走とは歩く事です。歩法です。
八卦掌は練功も戦闘技法も歩法が要の稀有な功夫です。
基本功夫を修得するための站椿(やらない派もあります)や両義掌(套路:基本の功夫の修得)や方形歩法(=万歩等)や四形八掌や下盤鍛錬の鶏形歩・鶴形歩・丁字歩・反丁字歩は誤解を恐れず言ってしまえば須らく扣歩と擺歩の変化、応用です。
何故か・・・。主眼となる練功法は道教の“転天尊”(≒走圏導引術)から取り入れられた八卦転掌(≒内修八掌≒定式八掌≒定勢八掌、他)の走圏だからです。
これを扣擺歩より足底→足→足首→膝→大腿→跨→腰→背の下部→背の上部→膀(≒肩)→上腕→肘→前腕→手首→掌→指へと旋転させます。
そうして下盤から中盤そして上盤へと水銀のような重く鋭い感覚を功として修得するのです。
この秘匿させている練功法は、扣擺歩と里進外扣により纏絲勁を掛けることです。
一歩一歩捻りを加えて歩く事は真伝では秘匿されている事です。(平起平落と踵から降ろす二つが基本。)
その捻りが手法の滾・鑚・浄・裏を具現化致します。(足からの功を腕へと導くのです。そのための身法です。
その身法は整体勁を促しますからただ正しく立つ難しさも歩法により整います。
整うとまず握力が強くなります。
そして歩けば歩くほど身体が軽くなります。
奥伝の軽功の門を開くものでもあります。)身法のネイ・旋・走・転。
歩法はもちろん起・落・扣・擺です。(これを八卦掌の“拳宗十二訣”と言います。)
走圏で「趟泥歩」と称するのは意拳の念法と同じ意味合いを持ちます。
そして(最初は4歩から始め最終的には)八歩で一周致します。
八歩は基準ではなく功が進めば必然的にそうなるのです。
走圏では必ず中心を見続けます。
構えにもよりますが人差し指を透して中心を観ます(手眼相合)。
中心には中心軸を仮想しその中心軸が我が内へと遷(うつ)るように歩き続け瞑想へと入ります。
これができれば站椿も放鬆の錬功も別に行う必要は実はありません。
只、とても難しいから形意拳の站椿や太極拳の放鬆功を取り入れただけなのです。
このことは覚えておいても宜しいと思います。八式ありますから瞑想にも八段階あります。
それぞれが相互連関し「念」と「功」を強化して行きます。
わたくしの師伯は「念法念波」をよくし、相手を不動にして撃つのを得意としていました。
これは他門派にはない八卦掌の特異な特徴とも言えます。今や丸○○派伝人と言う方がなぜか沢山お見えになりますが、董海川先師が口伝で残されたのは錬功上の留意点を示唆した「三十六歌訣」と戦闘法を示した「四十八法訣」位なものです。どちらも手にするのは難しいことはありませんし、翻訳意訳もありますから是非自家薬籠中のものにして修練・錬功に励んで頂きたいと思います。
八卦掌の定・活・変も歩法の変化と端的に捉えれば宜しいと思います。
やがて功が進めば陰陽双円を巡ることや九宮歩などの複雑な動きの功も積まなければなりません。
この辺りから千変万化の武術らしくなってきます。
八卦掌という位ですから「掌法」が多いとも言えますが、腕全体を八卦掌では「掌」と称します。
だから「拳打」も当然含まれます。最後に繰り返しますが八卦掌は足からです。
このことを肝に銘じて頑張って下さい。
わたくしは師伯のあまりの凄さに追いつくことは出来ませんでした。
ここでは特に八卦掌の重要な部分のみを記しました。
が、これらを基礎にし、また尽くの要訣は次の八母掌にも繋がります。
これが武術的型と形を導いて行くものになります。散手は意功を獲得したら己一人のみの、例えば龍形八卦掌のように、独創的に作り出す基盤が出来上がります。
最終的にはそれ以外にも暗腿や点穴法、閉気法、錯骨法、投げ、打撃訣・・・、そう言うものを含んだ狡猾極まりない戦闘法を結果として組み立てることになりましょうか。
新しい門派でもあり董海川の強い横の繋がりもあり、明朝末期くらいから確立されて行った多くの門派の功夫のほぼ全ての暗殺法・殺傷法が意功として伝承されています。
いずれにしても舞踏ではない真伝の八卦掌(拳)は恐ろしいものです。