剣道 「上段の構え」の技・テクニックのコツ・ポイント 18

「剣道 「上段の構え」の技・テクニックのコツ・ポイント 18」のまとめです。

身長182cmで、中段と上段を使い分けています。専ら中段ですけどね。現在六段です。

身長の高低をもって上段を構える意味を唱えることこそ無意味と考えます。
単に上段を構える場合は背が高い人の方が有利であるということです。

一番無意味だと感じるのは、上段のみの稽古をして中段での稽古をしないことです。極端なことを言えば中段がしっかりできていれば、いつでも上段に構えることが可能です。あえてそれでもやっておいた方がいいことと言えば、上段に構えたときの距離感のつかみかたと、左足前の足さばきくらいです。

ちなみに上段からの片手打ちは打突の瞬間に片手となるだけで、実際は両手で竹刀を振ります。本当に片手のみで打突するのは二刀流と隻腕の人たちです。
上段からの片手打ちをするときに竹刀を離す方の手(多数は右手)は胴を守るために下ろすのではなく、力強くかつ速く竹刀を振り下ろすために引き付けるようにすべきです。

上段の構えは、多くて3つだと思いますが……。

まず、左上段。これは普通、左足前だけです。
中段の構えから左足を出して竹刀を振りかぶり、
左手は左前額部、切っ先は寝かさないこと。
正面から見ると、切っ先は左に向いています。

右上段は、左上段を左右逆にした形です。
ここでポイントは、「手も左右逆」という点。
つまり、普通は柄頭を握るのは左手ですが、
右上段だけは右手で柄頭を握るのです。

ただ、剣道形などで使われる右上段の場合、
手は入れ替えません。左手は柄頭のままです。
つまり、中段から振りかぶった形ですね。

残った形は、柄頭は右手、足は左前の形ですが、
これはないでしょう。少なくとも剣道では。
古流の剣術では、似た構えがあるのですが。

いずれの構えにも共通する利点としては、
なんといっても攻撃力ですね。上段ですから。
振りかぶりの動作をせずに打ち込める上に、
片手打ちできるので、速度と間合いが有利です。

手が逆の右上段(上で最初に書いた右上段)は、
左上段と比べると見る機会が少ないので、
意表をつくことはできるかもしれません。
まあ、小手先の技術といえばそうですけど。

ざっとこんなところでしょうか。

高校で上段をとっていました。
私は腕力がなくて、その他の部分でなんとかしていました。

打突のスピードについては、構えと右手の押し出しです。
極端な話、竹刀を垂直に立てれば、右手の押し出す力がそのまま速さに変わります。
打突点まではいちばん距離が短く、なおかつ後ろから持ち上げるエネルギーもいらないからです。
一方で、後ろに倒すような構えと比べると、勢いや打ちの重さでは劣ります。
遠心力が使いづらいためですが、この点は腕力のある人ならカバーできます。
(まれに床とほぼ水平に竹刀を構えている人がいますよね。竹刀が相手から見えないためどのタイミングでどの方向へ打ってくるか全くわからないという最強のメリットがありますが、よっぽど腕力がある人でないとやはり打ちが遅くなります)

腕力があるなら、スピードを重視するなら床と垂直に竹刀を立てるような構えを試してもよいかもしれません。

もうひとつは、「右手の押し出しでスピードが決まる」とうちの先生が口を酸っぱくして言っていたので…。
上へ放り投げるのではなく、直線で前に出すかんじです。

次に、面の飛距離は、踏み込みと腰の回転です。
いちばん簡単なのは、踏み込みの距離を大きくすることです。
これは中段でも共通ですが、上段の特徴はここからです。
上段は片手打ちで半身になることによって、体を常に正面に向けている中段よりも、より遠くまで腕を伸ばせます。
このとき、腰から上だけでひねるだけでは不十分なのです。
踏み込みと同時に腰から大きく動かします。
これだけで、飛距離が変わります。

以上です。

上段の構えの利点は、上げた刀を振り下ろすだけという速さ、そしてそれを利用した片手技による射程距離にあります。

反面、左右の甲手・胴と突き垂をさらけ出して構えるため、もちろん中段より隙が多くなります。中段と違い、竹刀による防御はほとんど出来ません。つまり、相手が動いた瞬間には絶命させるだけの覚悟が必要です。退く事による防御しか出来ないのですが、退いては上に構える意味がないですからね。中途半端に技を出せば全て突きの餌食になり、少しでも躊躇すれば甲手は斬られ放題、ビビって上げた竹刀を下ろせば上段なのに面を喰らうという恥…。稽古中は常に腕は上げたままです。試しに一時間でも良いから構えてみたらわかります。普段から自分がいかに楽をして構えていたか。

もうお分かりでしょうか。上段に構えるにあたって一番鍛えなければならないのは、心です。一番必要なのは覚悟です。今は中段で稽古を頑張り、心を鍛えて下さい。相手が動いた瞬間に、常に躊躇なく出ばな面を打てるように頑張ってみましょう。それだって出ばな小手や返し胴を恐れてなかなか出来ないはずですよ。

日々修行です。それでもやりたいなら、まずは家で左片手素振りを毎日欠かさず500も振ってみたら良い。片手素振りは上段でなくても効果的なトレーニングです。それを一年間続けられたら今度はそれを左足前で前進後退の足捌きでやりましょう。